コオロギ、やしの木とアイスコーヒー

夜、近くの海辺まで歩き、湾の向こう側のきらびやかなマイアミビーチの光を見る。コオロギの鳴き声とやしの木の葉の風に揺られてなる音を聞きながら、ダンキンドーナッツのアイスコーヒーとタバコを吸う。村上春樹の、初期の頃の小説の主人公のような気分になる。寝そべると、波がコンクリートに打ちつけられるのがよく聞こえ、雲がゆっくりと動くのが見える。不思議とねっとりとした空気は、潮の匂いを運んでこない。月は三日月だ。そんな風に仰向けに寝ていると、ここマイアミで31歳の誕生日を迎えてしまい、ここにいることが不思議になる。確か、彼も小説を書き始めたのは30歳の頃だ。
20歳の誕生日はスペイン、マラガで迎えた。何をしたかは覚えていないが、もしかしたらあの時もこうして海を眺めていたかもしれない。人の根本的な所はあまり変わらないものだ。特に大人になってからは。あの時は不安でいっぱいであったと覚えている。何をするかはわからなかったが、何かやってやるぞという、わけのわからない若者にありがちな気合が入っていたと思う。今思い出すだけでもぞっとするが、何せ物事を知らなかった。知らないことにもきずいてなかった気がする。最悪のパターンだ。それからの10年間決して道は平坦ではなかったが(若者の無知も手伝って)、何とかここまでやってきた。それも、あれから10年間の間に逢った人たちのお陰である。ついていたとしか言いようがない。本当にラッキーだった。何も知らない高慢ちきな若者の成長を皆優しく見守ってくれたのだ。今でもかなり優しく見守ってくれていると思う。その人達がいなかったら今の俺はいないわけで、、、本当にいろいろ学んだ。感謝はしきれない。
アイスコーヒーのせいか妙に頭がさえる。今の仕事も板についてきた(いい表現だ。昔の人はうまいことを言った。)。もうはいはいは終わりだ。まだ手を借りるときがあるが、二本足で歩き始めないと。そう感じる、31歳の今日この頃です。
20歳のときも、やりたいことしかやっていなかったが、30歳になった今もそれは変わりない。40歳のときもやりたいことしかやっていないような気がする。。。